トランプ大統領の関税政策、発動するその真の狙いは
発刊日:2025年3月12日
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過去30年間で、NYの12倍に対し、TOKYOは僅か2倍の成長であった。 この成長率は、1995年1月と2025年3月のNYと東京の株価を倍率で比較したものだ。 株価が6倍の格差を生み、投資する不動産の価格は約3倍、賃金水準で漸く2倍の格差となった。 本サイトをご覧いただいている方々には、その輪郭のイメージが少し湧いていることと思いますが この数値に内在する様々なこの要因が、バブル崩壊後の日本を駆逐してきたのでしょう。 注:日本と米国の株価上昇率の参照 -------------------- SP500種(USD) -------------------- 1995年 460 2025年 5,638 -------------------- 倍率 = 12.2 -------------------- 日経平均株価(JPY) -------------------- 1995年 19,684 2025年 39,307 -------------------- 倍率 = 2.0 |
第一の要因は経済循環の問題であり、バブル崩壊後、日本の経済が成長しないのは市中に資金が循環していないことが最大の要因といえる。米国は経済循環が機能し、個人消費の増大化と共に企業経済の著しい成長を勝ち取った。この30年間で株価が12倍となっているのが何よりの証拠といえる。 |
世界の投資家から映る日本の不動産や株式の投資マーケットの様相を計るに、あまりにも割安で、あまりにも脆弱な様相を指している。米国の国民は米国経済の成長に対し大いなる希望を持ち続けている。米国で設立した政府効率化省(DOGE)が何を始めるのか、米国の国民は大いなる期待を込めて新たに2024年11月の選挙で大統領を選出した。 |
トランプ大統領が思い描いている米国の未来像は、目先の財政や政府支出の削減が目的ではないと推察する。最大の目的は建国のアメリカを取り戻すことだ、欧州からの移民で始まった米国は、イギリスの軍隊が担う南部とアメリカンドリームの開拓を成した白人系民族を中心とする北部との南北戦争を経て、いまの米国を設立された。 |
今の米国は国家分断という表現で世界のメディアが配信しているが、分断ではなくナショナリズムの台頭というのが適切であるとみる。現在、夫婦別姓問題に関する法案の審議が進んでいるが、隣国の中国の様に世界に先駆けて夫婦別姓を法律とする国もあるが、稲作を中心とした社会から国家を形成したこの日本は、選択条件のあるなしに関わらず、残すべきである。 |
別姓となれば家族制度が消滅し、家族が経済上の同居人と成るやもしれぬ。米国の分断も、意見が違うことを理由として国家の分断を念頭に内戦を挑発していくのは如何なる勢力か。トランプ大統領が表明しているのは、ボーダレスな経済の統治を解除し、世界の国々が内需成長とともに経済の成長を図る社会基盤の整備、それが目的だ。 |
昨今、世界の配信ニュースでは、関税戦争という言葉が乱舞している。世界の国々では個々の特産物を有し、他の国々の人が必要とするならば、太平洋や大西洋を渡り、世界の隅積みまで食品や衣類などの様々な商品が輸出されてきた。自国の産業を守るために関税を課すことが、人を殺す戦争という言葉と何ら関係のない関税がなぜ同化して生まれるのか、到底理解できない。
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戦後の経済を動かしたグローバル経済は、確かに大きな成果があった。敗戦した日本を含みアジアを中心とするあらゆる国々の急成長を後押しした。このパワーがなければ今の中国も生まれてこなかったといえる。では、トランプ大統領はなぜグローバル社会を崩壊させ、国家のナショナリズムを回帰させようとしているのか。 |
日本での輸入農産物はものすごく税金が高いが、この関税に対し、欧州や米国の人々が「貿易戦争」という言葉で日本を批判しない。まず、自動車と鉄鋼への課税が25%と同時発信した。国内のメディアでは自動車の生産が低下し、貿易の減少で、財政収支の赤字要因として短絡的にとらえている傾向にある。されど、トヨタを中心に海外生産への現地生産体制は整備され、昔ほどの大幅なダメージは発生しないとみる |
その産業変化をもって、自動車部品まで拡大し25%の課税が見込まれた次第だが、日米自動車摩擦というニュース用語で1970年代に自動車の輸出産業は労組を中心に米国政府と関税交渉を戦った。同時に起きたドルショックもあり、急激な円高を迎え自動車の輸出産業は根本的なダメージを受けた。 |
当時の日本政府は、為替と関税という販売先国との経済交渉に対する緊急の対策を講じた。それが、現地生産体制へのシフトであった。海外との取引は物を作り輸出する貿易取引とした戦後体制を政府の後押しで、進出先の政府と交渉し現地法人を世界中に作り出した。その結果、貿易取引は低下し、1990年代以降、世界の貿易取引は低下し、船舶や航空機の運賃は軟化した。 |
その兆候を見降ろしてきたグローバル取引の啓蒙者たちが推進させてきたのが、ずばり、関税の撤廃であった。まず、欧州石炭鉄鋼共同体から端を発したヨーロッパ経済共同体、当初は関税の廃止を旗印に欧州の各国がこの経済共同体の第一歩を作った。そして、このハードルを乗り越えたフランスやドイツなどの加盟諸国は、関税と人の移動を自由にし、最終的に通貨の統合を図った。これが、いまのEU(欧州連合)だ。 |
通貨の統合をしたばかりは、EUをヨーロッパ共同体と称していたが、通貨が統合されたのち、通貨発行権を得たころから欧州連合と国家の名称を名乗ることとなった。このEUは米国ワインの輸入関税を400%に関税率の変更を宣言した。昨今、イギリスがEUを脱会した理由が少し浮き彫りとなってきたが、EUに加盟している国家群はこの関税プランに対し何ら国権を発動することはできない。 |
では、日本の輸入小麦の場合、米と同様に政府の輸入割当で海外から一度輸入し、政府放出で関税名目の販売益を確保する。この政府収益は生産農家へ還元され、国内産小麦の市場価格が輸入の小麦価格と均衡化するように関税を敷き、生産調整金という名目で生産者へ給付されている。相手の国を攻撃する武器に変えることなく、国内産業の保護を目的とするのがこの関税の役割となっている。 |
一時的に関税の引き上げは物価の引き揚げやコスト増の要因をなることと思うが、日米貿易摩擦の歴史にもあるように関税の発動が、則、関税戦争という言葉で一括するのは少し乱暴な表現と捉える。戦後のグローバル経済を総括すると、アジアの経済が啓蒙され、欧州の経済は低下、米国の経済は断トツの勢いで天下を取った。東西冷戦構造の終結により誕生したグローバル経済の思考は、結果としてナショナリズムを回帰させる道を開いたともいえるのでは。 |
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