タイトル
発刊日:2025年4月12日
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この秋に予定する参議院選挙に向けて、国内の各野党からは消費税の減税を共通のテーマとして論戦を張っている。太平洋を越えた米国のトランプ大統領は、相互関税の旗振りにより、日本へ24%課税の要求をした。この関税率の根拠が日本が対米国に対し、実質的な関税が46%もあり、その相互関税の理論から、半分の24%が妥当だという論理だ。 |
一説には、対外貿易赤字の総額を解消するために輸入基本関税を逆算したとする意見もあるが、角度を変えて、国内の自動車に課す車両税、石油製品に課す石油関連税、不動産を所有する人が払う固定資産税と、日本で徴収している直接税は実に多くの商品やサービスにこの直接税が付加されて消費者に届くまでに幾重にも加算されている。 |
最大の直接税は日本の消費税である。現在の税率は10%とし食品に限り8%という軽減課税が導入されている。国内の評価が二分しているインボイス法の制定に伴い、国内の2024年度消費税収益は23.8兆円となり、年間の税収総額の34.2%を占める国内最大の税源となったが、1989年に消費税を目的税として法制化したことから、この消費税は社会保障費の財源に専有された。 |
現在、野党が5%程度の足並みでこの消費税の減額を目指しているが、仮に5%の減税であっても11.9兆円相当の財源が必要となる。されど、国民一人当たりの負担金を算出すると、年間約20万円となる。月額にして1.66万円相当となり、月に3万円のサラリーマンにとっては半分以上の大変重い出費となっている。 |
さて、ここで一つ消費税の疑問が生じる。日本国内の投資と消費の総額が600兆円を超えているのであれば、消費税が60兆円の規模近くで、計上されていないのはなぜか。消費税が目減りしている理由が、財務省が得意とする輸出による消費税の還付と課税の支払い特例などの施行だ。 |
国内の年間1,000万円以下の小規模事業者は、消費税の支払いが免除されてきた。また、年間5,000万円以下の売上条件に伏せて消費税の簡易申告という方式があるが、その他、一般の企業は消費税の受取額と支払額を税別に計算し、消費税申告を行う。受け取った分が多ければ納付し、支払いが多ければ還付されるという仕組みだ。 |
年間23.8兆円の消費税収入は、国が78%と地方が22%の比率で予算として分配され、国や地方政府の目的税とする社会保障の予算として使用される。日本の財政は全て法の制定をもって初めて予算が発動する、しかるに国会や地方議会の法律が制定されていない限り、1円のお金であっても国も地方も予算を使用できないのが日本の憲法。 |
GDP(国内総生産)は、法人及び個人を問わず、国内の投資と消費の総合計となるのだが、土地や有価証券などの減価償却されない資産を除いた設備や施設の投資が対象となる。減価償却のある商品の購入は原則的に消費税の課税商品となり、企業が投資した際は消費税の支払いが生じるのが常である。 |
よって、手元資金の豊かな大企業ほど、設備投資を増やすことで、この消費税や所得税の支払いが軽減されるのが通例だ。と同時に、政府としてGDPが上昇することを大義名分とし、政府予算の向かう矛先がこの設備投資に集中した。人口が増加した高度成長期は理にかなった戦略であったが、人口が減少する昨今の状況化となっては結果は見えている。 |
戦後80年となった現在、EUから始まった先進国の社会保障費が急増し、日本は消費税、EUでは付加価値税と名前を変えて政治の足元に深く入り込んだ。この直接税は、材料から部品製品まで、何回転も原材料のコストに加算され、商品とサービスの原価を構成する。トランプ大統領が日本の関税は46%と告知したが、日本の直接税を合算するとおそらく46%以上の直接税が加算され市場の価格を形成していると予想できる。 |
輸入品に対する直接税が関税となるが、米国が基本関税として全輸入取引に対し一律10%課税するというのは真に理にかなっている政策だ。米国は先進国の中で、唯一、付加価値税のない国であり、貿易赤字の解消は当然の要求である。消費税を米国の掲げた基本輸入税と置き換えてみると消費税の実態が浮かび上がる。 |
日本の消費税や欧州、アジア地域で導入する付加価値税(VAT)は、各国の製造業者が作り上げた製品に対し、基本輸入関税を徴収している仕組みと同じで、戦国時代に消滅した関所で課税する、関銭と同様の課税方式だ。と同時にVAT課税の導入国は、FTAへの参加と連動し関税の低減化を目指しているが、関税の代替え財源がVAT課税(日本は消費税)となっている構図である。 |
米国はVAT課税を導入していないことから、FTAが目指す関税の低減化を真っ向から否定した。トランプ大統領が常に目指しているのは、国民の所得に見合った物価の成長だ。このVAT課税に代わる政策として、基本輸入関税の宣言を世界に配信した。FTAの目指す自由貿易の方針では、貿易赤字の解決は不可能と米国は見切った。 |
旧ECC(ヨーロッパ経済共同体)はこの付加価値税の導入を促進し、輸入関税の代替え財源としてのプランを提唱した。当時の政府は消費税の承認を取り付けるために社会保障費に限定したこともあり、一般会計予算として消費税が使えなくなった。結果、欧州も日本も消費者物価が所得以上に上昇し、国民の生活が豊かになったとは、到底、思うことはできない。 |
経済の成長過程であった国は、この自由貿易をベースとするグローバル経済の拡大で、その恩恵を受けた。筆頭は中国やベトナム、インドなどのアジア地域がその恩恵を謳歌した。関税を撤廃すれば世界の物価は均一化するという近代経済学の概念もあり、自国生産をせず、生産が世界に分散した。されど、先行した欧州や日本の経済はなだらかな成長すら、しっかりと、掴めていないのが現状だ。 |
米国に始まり、欧州や日本などの先進国といわれた国々は、今一度、内需拡大を見直し、実体経済に還元されない消費税という財源の見直しをゼロベースで緊急に検討すべきである。これから、関税をフリーにして国益に叶うのは、生産コストの安い経済途上国の国々だけであり、今の先進国にとって適正な輸入関税と直接税の低減下は至上命題の政策課題だ。 |
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