コメの小売平均価格、@4,233円/5kgは妥当な値段か
発刊日:2025年5月12日
※この文章を音声データに変換、ボタンを押して再生ください。
米国のトランプ大統領は日本は米の関税に700%も課税をしていると世界に配信した。日本の政府はそんなことはないと否定的なコメントに終始したが、さて、実態はいかような状況なのか、コメの輸入関税は本当に700%なのか、スーパーの米が5kgで5,000円相当もするのは妥当な価格といえるのか、今月号ではコメの価格や関税について正面からこの考察を配信する。 |
まず、米の関税について解析を始める。周知のとおり輸入関税とは海外の製品を国内で買い付けた際に掛かる税金だが、この輸入関税には2つのタイプの課税方式がある。一つは通関時のインボイスに掛かれている価格に一定の金額を上乗せして税金を支払うタイプだ。例えば、テーマのコメの場合、関税率は1kgあたり402円が基本関税となっている。 |
次にインボイスの価格に基本税率を乗じて計算した関税を支払うタイプが2つ目のタイプだ。コーヒー豆などの基本税率は20%が税率となり、輸入したCIF価格に対しこの税金を加算し港で税務署に納税し、保税ヤードから荷物を引き取る。コーヒー豆の価格が仮に854円であった場合、税金は854円×20%=170.8円が1kgあたりの税金となる。 |
この課税方式を選択している品目は比較的に国際競争力に高いものが多く見受けられる。他に外食等で利用されているキャベツなども関税率が5%と定められており、WTO税率では3%と低率の関税となっている。野菜などの生鮮食料品は海外から冷蔵コンテナで搬送され、輸入価格が国産品と比べ割高となっているのが実情だ。 |
キャベツが1個800円という前例のない価格迄上昇すれば、海外から輸入のキャベツが港に集まり、国内の生産者も畑の作付けを増やし、今度は出荷超過で価格が正常化する。これが市場原理の効果ともいえるが、税率適用の課税品目はこの市場原理が働き価格と供給が安定化する。 |
課題は、コメなどの税を率で決めず、1kgあたり○○円と固定して上乗せする品目がそのモデルだ。コメの輸入基本関税は1kgあたり402円となっているので、米国のカリフォルニア米(玄米)の東京CIF価格を225円と仮定するとこの輸入米は627円が輸入原価となる。このCIF価格は店頭価格の半分を玄米価格とし、その1.5倍で東京ポート渡しの計算だ。 |
では、コメの税金が402円に対し、取引価格が225円としても、倍率は1.78倍で178%が輸入関税となり、控えめに見ても700%にはならない。ウクライナの侵攻に始まった船舶や資料資材の急騰前の価格が仮に3倍というケースを想定した場合、3年前の価格が1kgあたり75円となり、関税の402円に対する倍率は5.36倍となり536%が関税率と置き換えることができる。 |
米国が日本のコメ関税を700%と言い放った気持ちは理解できるが、日本人にとってコメは文化であり、社会が推進するエネルギーとして位置づけし、明治維新が訪れる前までは、コメが藩の財政を支えていた基軸通貨でもあった。関税は、供給と購買との需給バランスで形成される価格という市場原理に乗せることができない産業を守ることがその目的だ。 |
この関税が国政にとって有効な財源として活用できるのは、価格の競争で崩壊し兼ねない産業の保護以外に何があるというのか。今、米国では半導体や自動車産業という米国の基幹産業の復活をかけ、WTOを相手に関税戦争を開戦している。ただ、一つ疑問も残る、政府が指定する14品目の主要野菜は3-5%と税率を安くしても市場競争に打ち勝っている。 |
コメはなぜ国際的な市場競争に参加し、日本のコメ価格を維持できないものなのか。コメの関税1kgあたり@402円を厳守するのは政府の責務は当然だが、今回は関税の"交渉"を進めている以上、国際的な慣例とする本格的なディベート対決を望むのも一理だ。緊急に政府の調査チームを編成し、米国やアジア及びEUなどの諸国でkgいくらで販売が可能なものか、市場価格はいくらが適正なものなのか |
政府内でコメの輸出戦略が稼働し、輸出量を8倍とする思い切った輸出計画も発動されている。国内が急騰し品薄となっているのになぜ海外にコメを売るのか?その動機は減反政策の廃止と水稲における生産の大型化が急務だ。国内の人口がピークの半分になるやもしれない人口減少問題。この生き残りをかけたコメの輸出計画は国運を賭けた生産者の戦いだ。 |
ただし、解決が必須の命題がある。コメの流通価格のオープン化だ、コメが高いと毎日のTVやネットで酷評を浴びているが、生産者の出荷価格と小売価格の倍率が2倍というのは甚だ疑問である。玄米の生成歩留まりが90%、玄米を精米化する委託費が1kgあたり25円としても2倍は高い、DBと袋の資材費と貯蔵費用を1袋当たりの合計500円、米屋の配送マージンは15-25%程度しても、1.5倍が限界だ。 |
食管法は廃止され、コメの流通が自由となった今、コメの生産と流通を増加させるカギは、市場原理の導入とみる。現在、コメの流通現場では価格の二重構造が生じている、政府の買取価格と、コメの商社が産地で買い付ける価格に、実に大幅な開きがある。政府主導でコメの先物市場を形成し、青田買い制度からテクニカルな金融工学を駆使して市場による適正な価格を作り上げるのが政府の命題だ。 |
※この文章を音声データに変換、ボタンを押して再生ください。
国内外の経営者もしくはこれからベンチャー企業を目指す将来の経営者予備軍の方々へ向け
毎月12日にネットでの限定発信により、2020年1月~毎月「しんか」をご提供しております。
>
OIA協会トップページへ