
日本の金利が中国より高くなると、日本にどのような影響があるのか
発刊日:2025年12月12日
※この文章を音声データに変換、ボタンを押して再生ください。
|
本日、2025年12月17日の市場レートによると、10年物日本の長期国債の利回りは一時1.980%まで上昇した。この金利上昇は、約18年半ぶりの高水準となる高値更新となったが、さてこの金利上昇に則して、日本の何が変化していくのか、もしくは海外の市況と何らかの相関性をもって金利が動いているのか、このポイントを追ってみることとする。 |
|
市場で国債の金利が上昇するということは、国債の市中での相場(価格)が下がり、表面レートに記した金利を今より多く増けとれると、市場の予想した結果でもある。金利が上がれば国債の相場を下げなければ市中で処分できないという市場原理だ。 |
|
さて、本日の国債が下がり、金利が約18年半ぶりの高水準となった。則ち、金融機関や機関投資家などのディーラー達の売り注文が多く市中に持ち込まれたため国債の相場が減額し、利回りが急伸した。国債が下落し、市中の金利が上昇し始めてくると、日銀はプライムレートを発動してインフレの抑制を実行する。この公定レートにより、慎重な決定を実行し、インフレ破綻に対する保険的機能の役割を果たしている。 |
|
国債は政府の債務であることから、万が一、無尽蔵に国債を発行してしまうと、当然の結果として国債は暴落し、利回りが異常なレートに急変し、国家の財政が破綻してしまう。その防衛部隊の元締めが法定通貨の発行権を有する日銀となっているのが、世界の先進国の国々が採用している中央銀行の制度である。少し余談だが、隣国の香港ではHSBC(香港上海バンク)という民間の一銀行が法定通貨である香港ドルの通貨発行権を有している。 |
|
金利が国債の相場を動かすだけではなく、他の金利変動の要因もある。それは為替の変動だ、東西の冷戦構造により、西側陣営の強力な国際通貨であったドルは、その後、20世紀の終わりから始まったインターネット社会の到来により、世界マーケットの連結が始まった、即ち、グローバル社会の台頭だ。その後、金融市場では、コロナ過の反転から、株式の他、金や不動産の価格も急激に急騰した。 |
|
この世界的なインフレーションは、戦後の日本のような、高度な経済成長による需要の拡大があったからではない。総額GDPで世界第二位となった中国が世界の消費地であったのならば、その論理には矛盾が残る。中国は、高度成長期の日本と同様に世界の工場となり、米国を中心とした世界の巨大な市場に対する輸出により経済を発展させたのが原状である。 |
|
米国のトランプ大統領が発令した中国に対する関税戦略は中国にとって予想だにもできなかった、前例のない奥深いダメージを張ったことと言えよう。現在、中国の「万科」という不動産会社がある、2024年度の売上高が約7兆円、この中国最大手の不動産会社の売上が前年比3割近く落ち込み、経営破綻のリスクが急速に押し寄せ、一発触発の経営危機となっている。 |
|
売上高7兆円というとパナソニックが2025年度予想で約7.8兆円、ソフトバンクグループが約6.5兆円となっている。この規模のクラスの企業が倒産となると、下に連なる請負企業は全滅の危機になる可能性もある。中国の万科が不動産会社であることから推測できる事は、より多くの外貨が必要と予想できる。中国国内からは人材や鉄骨や鉄筋、材木や土砂などを国内で搬入し、室内装飾や備品等を韓国や他のアジア近隣諸国などから輸入していると考えられる。 |
|
外資による輸入の場合、アジア諸国での決済は米ドルが主流で、この万科も膨大な米ドルが必要となり、外貨建ての債券を発行し決済通貨の用立てをしたことと思われる。仮に人民元建て資金であれば、中国政府系の銀行融資金で決済のジャンプも資金増額も調整は可能だ。されど、米ドル建ての資金となれば外国の銀行や機関投資家などからの資金調達となることから、満期が来た債権のジャンプは予想以上に難しい局面を迎えている様子だ。
|
|
2014年の初頭には、年率4.5%近くに急騰しその後金利は下がり続けて、現在は中国の10年物国債は年率1.846%のレートとなっている。既に中国の市中レートが日本のレートを下回ったという時代が来た。レートが逆転すると資金も逆回転し、中国に集まっていた資金も引き上げが始まるのは当然となる。万科の資金繰り延べ交渉だが、金利が逆転し最中であることからも来年あたりが中国市場に大きな変化が生じることと予想する。 |
|
日本の金利に戻るが、国内のインフレと同時に海外の為替や金利動向によって大きく動くのが金利(国債市場)である。過去の紙面で逆イールド取引の事を少し書いたが、市中レートと日銀が誘導したい金利レートにギャップが生じた場合に、日銀は引受けた新規発行の国債を日銀が買い取ることがある。既に完了した日銀対策の一つだが、日本の銀行が買い受けた国債を市中で売却できない際に日銀が救済する手法の一つだ。 |
|
現在は、国債の市中価格にこの逆イールドが生じないので、銀行や証券会社の法人は財務省から引き受けした国債を日銀の公定レートで買取りしても、銀行のマージンを取って国債を市中で処分できる正常な状態が続いている。これが、メディア等で云われている金利の正常化だ。 |
|
今までは、中国の金利も日本の3~4倍の対レートで推移してきたことからも、円キャリートレードと言われている円建て借金による人民元の投資なども投資家の人気があったが、この金利の逆転移より、世界の投資マネーが急成長していた中国から逃避し、東京に資金が集まり始めたのやも。
|
|
今回の逆転の始まりで、人民元ばかりではなく、ドルに対しても円が底堅く、ゆっくりと動き始めた。グローバル化が推進したこの30年間は人民元が日本円より高く推移し、ドルも人民元に対し高く推移することで中国は世界の向上と云われる存在にもなった。その終焉にたどり着いたころ、中国の武漢を発信源とするコロナ過が世界を斡旋し、結果、国際的なグローバル信仰は終息を迎えた。 |
|
今、中国人の留学生は停止され、人の移動はかなり激減しているが、資金だけは政府の意思に反しているものなのか日本国内への資金流入は止まっていないようにも見える。都内の商店街の空き家が出ると中国人系の店舗が進出しているのが目につく。中国の金利が現在の1%台で推移し、日本の金利が3%を超えてくる市況が見えてくると、世界の機関投資家は横並びに日本市場への資金投入を始めることだろう。 |
|
日本の金利が適正に上昇することで、まず、銀行が国債を中心とした市中での売買収益を手厚く確保でき、一番の効果は中小企業に対する貸し出しの増加期待である。中小企業の貸し出しには貸し倒れリスクをヘッジする経費が求められる。今までのようなマイナスレートでは市中の収益が上がらず、この貸し倒れリスクの積立金の準備が困難であったが、金利の上昇により、銀行陣は資金が潤沢に推移し、金融機関としての本来の業務を全うすることも可能となる。 |
※この文章を音声データに変換、ボタンを押して再生ください。
国内外の経営者もしくはこれからベンチャー企業を目指す将来の経営者予備軍の方々へ向け
毎月12日にネットでの限定発信により、2020年1月~毎月「しんか」をご提供しております。
>
OIA協会トップページへ